院長のひとりごと

 著書から広がる「人の輪」                      
 2017/06/12

今年の2月に「死ねない老人」という本を幻冬舎から出版しました。出版後より多くの方々からご意見を頂戴しました。出版がきっかけとなって日本尊厳死協会関東甲信越支部理事を拝命。今後尊厳死に関する市民啓発や尊厳死法案の施行にむけて微力ながら頑張ることとしました。最近、「102歳の平穏死」(水曜社)という本を、著者である井上貴美子さんよりいただきました。101歳まで元気であったお義父様が、骨折を契機に入院し、それからご自宅で看取るまでの過程が、市民の視線から淡々と、かつ大変的確に書かれており、医療者としても大変勉強になりました。医療者のみでなく、一般の方々にも是非読んでいただきたい本であると思います。

さらに、ありがたいことに共同通信社の記者の方が書評を書いて下さいました。そしてこれを契機に在宅医療に関する取材を受け、以前からおつきあい頂いている日本医事新報社、朝日新聞社など、マスコミとのつながりも徐々にですが、広がってきています。私自身、拙著の反響が思った以上に大きくてうれしい反面、やや驚いてもいます。ただ、この著書を通じて、新たにできた人のつながりを今後も大切にしていきたいと思っています。 

医薬分業について
2003/09/01

 

他のページにもお書きしましたが、院内処方に比べて院外処方が高価であることは問題です。

以前は薬価差益(薬の仕入れ値と売値の差額)があり、それを得るため診療所は多くの薬を処方し、その結果「薬漬け医療」、「薬害」を引き起こしたことは厳然たる事実です。当時の厚生省はこれを食い止めるためいわゆる医薬分業(=院外処方)を推進しました。院外処方にすれば薬をいくら処方しても診療所が得るのは処方料のみであり、薬価差益は薬局が得ることになるからです。

現在、薬価差益は非常に少なくなった(逆ざやになるものもあります)ので少なくとも診療所レベルでは「薬で儲ける」時代ではありません。つまり「薬漬け医療」の防止のためには医薬分業はすでに意味がなくなっているのです。

逆に、

 

1.患者さんの支払いが多くなる。

2.薬を得るためにわざわざ薬局に行かなければならない。

3.時として医師と薬局薬剤師の間に説明の食い違いがある。

 

といったことから私は、医師が使用する薬の副作用や相互作用に精通していれば、院内処方の方が患者サービスという観点からは優れているのではないかと考えています。

院外処方は診療所サイドからみても、

 

1.薬剤の在庫管理の必要がなく、それにかかる人件費などの費用が節約できる。

2.保険請求が簡略化できる(薬剤の請求を記載する必要がない)。

などメリットは大きく、一方院内処方は在庫管理など大変なことも多いですが、患者さんのことを考えて可能な限り続けていこうと思っています。

 

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健康管理の重要性を痛感する毎日です
2003/09/02

 

小生は大学を卒業後2年間千葉県救急医療センターに勤務しました。「医師になるからにはどのような患者さんに対しても最低限の処置はできるようになりたい」との考えからまずは救急医療を志したのです。

それはさておき、この施設には日夜多くの脳卒中、心筋梗塞、交通事故などの重症な患者さんが救急車で搬送されてきます。このなかで特に脳内出血の患者さん(ご本人の意識が悪くなっているときはご家族)からお話をうかがうと、驚いたことにほとんどの方が「高血圧があると言われていたが、医者にかかっていなかった」とおっしゃるのです。

そのようなときにいつも「ちゃんと治療しておけばこんなことにならなかったのに!」と心の中でいつも叫んでいました。高血圧はそれ自体無症状でありながら動脈硬化を確実に進行させ、ある日突然このような形で症状を出すのです。

糖尿病、高脂血症などの他のいわゆる生活習慣病も同様です。普段は健康のありがたさを忘れがちですがこのような患者さんと出会うと(このようになってしまった患者さんやご家族はなおのことと思いますが)健康でいられることはつくづくありがたいことだと実感してしまいます。

病気は予防が肝心です。健診はおっくうがらずに機会があれば是非受けてください。そしてもし生活習慣病が見つかったならその管理をしっかりするのが良いと思います。

 

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患者さんに学ぶことのありがたさ
2003/09/03

 

小生は昭和63年に大学を卒業後5年間、千葉県救急医療センターを始め千葉県内の3箇所の病院に勤務し、平成5年から4年間大学院で外科学に関する研究をしました。そして大学院卒業後平成9年から15年までの6年間、大宮赤十字病院外科(現さいたま赤十字病院)に勤務していました。

病院に勤務している間は多くの患者さんとの出会いと別れがあり、楽しかったこと、うれしかったこと、悲しかったこと、つらかったことなどいろいろな経験をしました。病院に入院し、なおかつ手術を受けるということは原因となる病気がなんであれ、その方の人生の一大事です。病院にいらっしゃる患者さんは多かれ少なかれ「何で自分だけこんな目にあわなければならないのか」と思われているのではないでしょうか。

したがって医療従事者は患者さんやそのご家族と話をするとき、言葉には充分気をつけるべきだと思っています。不幸にも癌などの悪性疾患で治癒が望めない方の場合は、ご本人やご家族の苦痛は大変なものです。そのような方と真正面に向き合うことは医師を何年やっていてもとてもつらいことですが、そのときに患者さんは私が医師として(あるいは人間として)どうあるべきかを教えてくださるように思います。

医師となって16年目となり、今まで学術的、技術的にも得たことは多くありますが、それ以上に患者さんから教わったことが多いと実感し、感謝しています。

 

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ジェネリックもいいですが、それだけで良いのでしょうか?
2004/04/09

 

最近、ジェネリック品(薬剤)がマスコミで話題として取り上げられるようになりました。ジェネリック品は後発品とも言い、開発元の製薬会社が製造した医薬品(先発品)のうち、製造特許の切れた薬剤を他のメーカーがコピーして製造したもので、開発費がかかっていない分安価な医薬品のことを言います。

マスコミでの論調は先発品を処方する場合とジェネリック品を処方した場合の価格差のみを強調していますが、もう1つ肝心なことが抜けています。

それは院内処方と院外処方の価格差です。他のページでも述べているように、院外処方は院内処方に比べて調剤費などが余計にかかるために同じ薬剤をもらうのになぜか余分にお金を支払わなければならないのです。品質の良いジェネリック品を院内処方するのが最も安価なので、当院でもいくつかのジェネリック品を使用していますが、一部には品質や効果の面で首をかしげたくなるようなものもあることは事実なので、できれば高価でも品質のしっかりした先発品をお出ししたくなるのが人情です。

そこで、最近話題の高コレステロール血症治療薬のプラバチン(先発品名メバロチン)を例として、先発品を院内処方した場合と後発品を院外処方した場合の価格を算出します。詳しい算出方法は別のページに書いてあります

 

2週間分処方された場合

・メバロチン(三共、先発品)1錠 (10mg、1錠145.5円)   14日分

・プラバチン(沢井、後発品の一例)1錠 (10mg、1錠78.9円)   14日分

 

院内処方(専任薬剤師のいる診療所)の場合:

院内処方料+調剤料(内服)+薬剤情報提供料+薬剤料

 ⇒500+90+150+145.5x14=2,777円(メバロチン処方の場合)

 

院外処方の場合:

院外処方料+調剤基本料+指導管理料+内服調剤料+薬剤情報提供料+薬剤料

 ⇒690+390+470+(50x7+40x7)+150+145.5x14=4,367円(メバロチン処方の場合)

 

 ⇒690+390+470+(50x7+40x7)+150+78.9x14=3,434.6円(プラバチン処方の場合)

 

結果として、院外処方同士で比較すればジェネリック処方により2週間で932円、1年間で22,368円(つまり3割負担では6,710円)の節約となりますが、それでも院内処方で品質の確実な先発品を使用するほうがジェネリックを院外処方するより1年間で15,792円(3割負担では4,738円)安いのです。

政府が本気で医療費削減をしたいのならば院外処方を抑制するのが良いのでは?と思ってしまいますが、皆さんはどうお考えでしょうか。

 

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鋳物業などで「じん肺」といわれた方、健康管理手帳をお持ちですか?
2004/04/10

 

川口市はご存知のように鋳物業が盛んです。そのため、使用する砂型の砂によるじん肺が多く、以前鋳物業に従事しておられた患者さんにもじん肺と診断されている方がいらっしゃいます。

健康管理手帳は中程度以上のじん肺と診断された方が退職後も定期的に肺がんの早期発見に有効な「らせんCT」などの健診を無料で受けられる制度です。じん肺にかかると肺がんになる可能性が高いため、国が早期発見のために作った制度で、らせんCTは検査料が高価なため、じん肺の方は健康管理手帳を「持たなきゃ損」です(私はじん肺ではありませんが欲しい手帳です)。

もしご家族やお知り合いでじん肺なのに健康管理手帳をお持ちでない方が居られましたら是非ご相談ください。 

 

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労働衛生コンサルタント免許を取りました
2004/04/13

 

労働衛生コンサルタントって何?と思われても、産業医のことをご存知の方は多いと思います。

産業医は企業に雇われて従業員の健康管理を行う仕事ですが、労働衛生コンサルタントは第3者的な立場からその企業が労働者の健康管理、衛生管理をちゃんと法令にしたがって行っているかチェックし、労働災害の予防、あるいは一旦労災が起こった場合はその再発防止を指導することができる国家資格です。ありていに言えば産業医よりも労働衛生に関する専門性が高い職業といえると思います。

産業医と異なり、小規模の事業所であってもご相談に乗れますので、もしお困りのことがあれば声をかけてください。

 

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癌患者さんの在宅医療について思うこと
2004/08/26

 

本格的に在宅医療を始めて1年になろうとしています。私が在宅医療をやろうと思ったのは、さいたま赤十字病院に勤務していたときの経験からでした。

その当時は私が在宅医療をしていただく開業医にお願いする立場だったわけですが、患者さんやそのご家族が在宅での治療をご希望されてもなかなか引き受け先が見つからないことが多く(特に癌患者さんの場合)、そのうちに病状が悪化して退院できなくなってしまうこともありました。

貴重な人生の残り時間をご自宅で過ごしたくても過ごせなかった患者さんの無念さを思うと、なんともやるせない気持ちになってしまったもので、開業医となって私がこのような患者さんのお役に立とうと思ったのはごく自然なことだったと思います。

現在も数名の患者さんのお宅に通っておりますが、「もっと早く知っていればよかった」と患者さんがおっしゃられることが多く、在宅での癌治療をさらに拡充することの必要性を痛感しています。

 

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PET検査に行ってきました
2005/04/12

 

当院で3月から癌の早期発見に有効といわれているPET検査を西台クリニック、ゆうあいクリニックと提携して行うこととしましたが、何事も経験が大切と3月26日に早速PET検査を受けに横浜のゆうあいクリニックに行って来ました。今後PET検査をご希望の方もいらっしゃると思いますので、小生の体験談をお聞かせします。

まず受付や窓口の雰囲気はさすがに街中の診療所とは一線を画す感じで、医療施設らしからぬものでした。そこで丁寧な検査の案内を受け、更衣室で検査着に着替えて身長、体重、血圧測定と問診を受けました。

その後PETに必要な薬剤の注射をしてもらい、薬が全身に行き渡るまで55分間安静にして検査を待つのですが、この間はトイレにいくことのみOKで、その他は何もしてはいけない(ひたすら寝るだけ)ので、この時間がやや苦痛な方もいらっしゃるかもしれません。その理由として、もし本を読んだり筋肉を動かしたりしてしまうとそこに薬剤が余計に回ってしまい、肝心のがん細胞に薬剤が集まらなくなってしまうためとの解説を受けました(検査に使用する薬剤はブドウ糖の一種なのでこのような現象がおきるのです)。

その時間が終わるといよいよ検査となります。検査器械はCTスキャンそっくりのもので、検査台に20分間横になっているだけです。応対していただいた技師の方は終始にこやかで、感心すると同時に当院の職員(小生も含めて)も見習わなければと思いました。検査終了後、注射した薬剤の放射線が弱くなるまで約30分間別室で待機します。この間は何をしてもよく、部屋には雑誌もおいてありましたのでどうということはありませんでした。

時間になると更衣室に案内されて終了。全工程3時間弱、費用は約¥94,000でした。身体的にはほとんど負担はなく、頭部、腎臓、膀胱など一部判りにくい部分がある、炎症のある部分が陽性になる可能性があるといった弱点はありますが、胸のレントゲン写真3枚分くらいの非常に少ない放射線被爆で、ほぼ全身の癌の検索に有効な検査です。

費用が高いか安いかは皆さんのご判断にお任せします。

 

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ご迷惑とご心配をおかけしました
2005/06/21

 

去る4月26日に虫垂炎となり、入院、手術を行いました。幸い経過は順調で、1ヶ月ほどでほぼ体調は戻りました。その間に皆様には休診・診療時間の短縮でご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

個人的には今まで外科医として患者さんのお腹を切っていたのですが、今回は切られる立場となり、手術を受ける患者さんの辛さ(といってもたいした手術ではありませんが)を理解するよい機会となりました。今後この経験を生かして日常診療に精進いたしますので今後もよろしくお願いします。

 

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馬鹿みたいな話といわれそうですが・・・
2005/06/22

 

実は虫垂炎の手術を受ける際、これも経験するよい機会と思い、全身麻酔をかけてもらいました。その影響からどうかはわかりませんが、退院後のどの痛みが続いていました。そこでマスクをして診療をしていたのですが、ある患者さん(Aさんとしましょう)を診察しているときこのようなやりとりをしました。

 

Aさん「先生、どうしてマスクしているんですか」

私  「いやー、全身麻酔のせいか、いつまでたってものどが痛いんですよ」

Aさん「で、薬は飲んでいるんですか。人にいつも出しているんだから当然ですよね」

私  「・・・飲んでません」

Aさん「どうして飲まないんですか?」

私  「・・・まったく思いつきませんでした。スミマセン。今日から飲みます」

Aさん「そのほうがいいでしょう。」(どちらが医者だかわからない!)

 

というわけで、その日から薬を飲み始め、おかげさまでのどの痛みは大分よくなりました。このような立場にいながら他の人に指摘されなければ薬を飲むことさえ思いつかないのですから、我ながら情けない限りです。

ただ思い起こしてみると今までも患者さんに「そんなに無理して仕事しちゃだめですよ」とか、「先生もお大事にしてください」とか時々注意していただいたことがありました。そのおかげで今までやってこられたのかなと思います。患者さんを元気にすることが本来の仕事なのですが、同時に患者さんから元気をいただいていることを常日頃感じています。

皆さんに感謝。

 

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